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ナルトサワギクと外来生物法

村上 健太郎

 

 ナルトサワギク(Senecio madagascariensis)というキク科の外来種をご存知でしょうか?大阪府南部や兵庫県では,日当たりのよい場所でよく見られ,岸和田市内でも,丘陵地の畑や空き地,沿岸部の埋立地などで,よく見かけます。はっぱ化石グループが採集会をする阿間河滝の化石産地などで,一面に咲いているのを見かけた方も多いことでしょう。真冬でもレモンイエローのきれいな花を咲かせ,大変よく目立つので,しばしば質問を受ける植物のひとつです。

 ナルトサワギクは,最近になって泉南地方でも目立つようになりましたが,国内では,1970年代に徳島県鳴門市で見つかったのが最初と言われています。しばらくこの植物の正体はわかりませんでしたが,博物館の標本調査などから,アフリカ南部を原産地とする種であることがわかりました。これまでに,家畜が食べると中毒を起こすことやナルトサワギクが生産する化学物質が他の植物の発芽・生育を抑制する(他感作用と呼ばれる)ことなどが知られています。

 さて,このナルトサワギクですが,2006年2月から,外来生物法の特定外来生物に指定されました。外来生物法とは,問題を引き起こす海外起源の生物を特定外来生物として指定し,防除などを行うための法律です。特定外来生物に指定された種については,それらを育てたり,生きたまま運搬・保管したり,輸入したり,野外に放ったりすることが禁止されています。より詳しい説明については,環境省の外来生物法のページ(http://www.env.go.jp/nature/intro/)で見ることができますので,ぜひご覧ください。2005年6月の第一次指定では,植物については3種(いずれも水草)が指定されただけでしたが,この2月から指定種が12種に増加しました。この中にはナルトサワギク,アレチウリ,ボタンウキクサなど,泉南地方でもおなじみの植物が含まれており,これらの種については,取り扱いに充分に注意する必要があります。野外でこれらの種を見つけた場合,再生や更新の可能性がある状態で持ち帰ることは原則的に禁止になりますので,根付きの個体や果実,種子がついている場合は採集が認められません。また,根や種子などがなくても再生する可能性がある場合も,採集することはできないそうで,茎だけでも再生する可能性があるナルトサワギクは,原則的に採集することが難しくなりました。採集,運搬や栽培については,研究目的の場合については,許可をとれば可能になると思いますが,博物館活動としての標本採集がどの程度まで認められるかについては,まだわかりません。今後,環境省や外来植物の専門家の意見を聞いてみたいと思いますが,少なくとも観賞目的で家で栽培することなどは,行わないようにしてください。

※このコラムは「きしわだ自然友の会誌Melange」20号:1. (2006)に執筆したものに加筆、修正したものです。

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写真1.ナルトサワギク(大阪府泉南市)

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写真2.ナルトサワギク(静岡県浜松市)

写真3.冬でもナルトサワギクの花は見られる

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